「30年間一括借り上げ」のからくり・・・危険が一杯のサブリース契約とは

「かぼちゃの馬車」スマートデイズ社の経営破綻により、スルガ銀行の融資審査に対する疑惑が表面化しています。同様なサブリース契約に基づいた「アパート経営」は多くの企業が参入している市場であり、他の金融機関へも波及するかもしれません。

そもそも「30年間一括借り上げ」などといった長期の保証をうたっているサブリース契約に問題は無いのでしょうか?

30年間一括借り上げ」の真の意味とは?

一括借上げでは、入居者の家賃支払い状況に関わらず毎月決められたサブリース賃料がオーナーに支払われます。ただし、サブリース契約には一定期間で更新があり、賃料の見直しがあります。従って、最初に決めた賃料が借上げの全期間について保証されるわけではありません。

一括借上げは、オーナーと借上げ会社が、全室一括して賃貸借契約を結ぶしくみ。空室があっても毎月決められた賃料が支払われる。しかし、賃料そのものは一定期間の更新時に見直しがあり変更になる場合もある。
(出典:「アパート経営・土地活用サイト。旭化成ホームズのヘーベルメゾン」)

2016年9月1日付けで国土交通省より、「サブリースに関するトラブル防止について」が通知されました。サブリースにつきものの家賃保証を巡るトラブル防止に向けての対策です。これにより、不動産管理会社はサブリース契約締結前に、将来の借上げ家賃の変動に係る条件を書面で交付し、重要事項として、契約者に対して説明することが義務付けられました。

家賃保証と言っても、空室分の家賃がすべて保証されるわけではありません。不動産管理会社によって賃貸物件に対する保証額はまちまちであり、一定のパーセンテージによる取り決めのルールはありません。
(出典:一括借上げ(サブリース)の仕組みと良くあるトラブル-生和コーポレーション)

なぜ賃料の値下げを要求されるのか?
競争激化による入居率と賃料水準の低下

条件の良い地区であっても同様の賃貸住宅が増えれば競争は激化し、入居率は低下し、賃料水準も低下することが想定されます。さらに築年数が増えるにつれ、新築物件との競争条件は悪化していきます。そのため、良心的なサブリース業者であったとしても契約時の条件を維持していくことは次第に困難になり、どこかの時点で賃料改定(値下げ)を提案せざるを得なくなります。

サブリース契約の解約条件が不利になっている

解約の可否を不動産会社が一方的に決定できる条項が入っている場合があります。また、更新時に条件を見直す条項は必ず入っていますので、その見直しで合意に到らない場合は必然的に解約となってしまいます。従って、最初に決めた賃料を値下げする場合は、その根拠を提示することを義務付けるなどの予防的な条項を入れさせるなどの自衛策が必要です。

「借地借家法」がサブリース業者に有利に働く

「借地借家法」では賃借人を弱い立場にいると位置づけ、大家より不当な扱いを受けないように保護しています。しかしながら、サブリース契約・一括借り上げ契約においては、一般に規模が大きいサブリース業者が賃借人の立場になりますので、法律で弱者として守られるという結果になってしまいます。また、不動産投資(賃貸経営)の場合、大家は事業者としての扱いになりますので、消費者保護法も対象外となります。そのため、サブリース契約においては事業者として、契約内容には万全の注意を払うことが求められます。

なぜ給与所得者に高額物件の融資が可能になるのか?

「かぼちゃの馬車」の被害者の多くは給与所得者です。仮に年収が1千万円あったとしても、1億円の物件を頭金無しで自宅として購入しようとしたら金融機関は融資しないでしょう。この、一括借り上げの仕組みが巧妙なのは、サブリース契約に基づき、給与所得に加えて事業所得が見込めるため、短期的には多少の損が出ても回せるという「三方一両得」的なストーリーが金融機関において説得力を持つ、というところにあります。

もちろん、堅実な大手都市銀行に持ち込んだら、さまざまなリスク要因を指摘され、却下されるのは明らかですが、そこでリスクを取る(取らざるを得ない)金融機関の存在がストーリーを実現可能にしました。

スルガ銀行がこの役どころを担ったのは、従来からのアグレッシブな営業戦略がなせる技でしょうが、「かぼちゃの馬車」以外の案件では他の金融機関も同様に立ち回っている可能性も否定できないところです。

「かぼちゃの馬車」以外の案件は大丈夫か?

スルガ銀行の第三者委員会の調査報告書が公表され、融資の審査書類などに改ざんや偽造があり、多くの行員の関与を認定するとともに、その背景にコンプライアンス意識の欠如などがあったとする調査結果を公表しました。このことはとりもなおさず給与所得者向けの投資用不動産関連融資のビジネスモデルの危険性を意味します。

同様のビジネスモデルで積極的にTVコマーシャルを打ち、ビジネスを拡大している業者も多く、この問題が他の金融機関にどの程度波及するのか、今後の行方が注目されます。

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